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相続土地国庫帰属制度で却下される土地。実際の却下理由と対処

更新日 2026-09-06

売れない、貸せない、それでも固定資産税と管理の責任だけは続く。そんな相続した土地の出口として2023年4月に始まったのが相続土地国庫帰属制度です。ただ、調べていくと「却下」という言葉に必ず突き当たります。申請しても断られるのではないか、断られたら払った手数料はどうなるのか。この記事では、法務省が公表している却下要件と不承認要件を整理したうえで、実際に断られた土地がどの理由で落ちているのかを法務省の統計から確認します。先に結論を書くと、最も多い却下理由は土地の性質ではなく書類です。

却下と不承認は、断られ方が違う

法務省の案内では、国が引き取れない土地が二段階に分けて整理されています。ひとつが却下要件で、その事情があれば承認申請そのものができないもの。もうひとつが不承認要件で、申請は受け付けられるものの、書面調査と実地調査を経て引き取れないと判断されるものです。入口での門前払いと、審査を経ての不合格。同じ「断られる」でも中身は別です。

どちらで断られても、納めた審査手数料は返ってきません。法務省は、申請を取り下げた場合や審査の結果却下・不承認となった場合でも手数料を返還できないと明記しています。1筆あたり14,000円が戻らない前提で、要件の確認は申請前に済ませておきたいところです。

承認申請 総数5,863件 却下 85件 土地の要件(法第2条第3項)と 手続の不備(法第4条第1項)で入口が閉じる 書面調査・実地調査 現地を見て要件を判断する 不承認 96件 審査の結果引き取れない土地 (法第5条第1項)最多は地上の有体物 承認・負担金の納付 基本20万円。森林などは面積に応じ増える 国庫に帰属 3,008件
断られ方は二段階。件数は法務省統計の2026年7月末(令和8年7月31日)時点の速報値

入口で止まる土地。却下要件のAからE

申請そのものができない類型として、法務省は次の5つを挙げています。

誤解が生まれやすい部分を、法務省のQ&Aから補っておきます。まず建物は、登記があるかどうかを問いません。未登記の古家でも、現に建っていれば申請はできない扱いです。山のように広い土地の一角に建物がひとつあるだけでも却下されます。逆に物置小屋のようなものは建物に当たらない場合があり、そのときは地上の工作物として管理に過分の費用がかかるかどうかで判断されます。

抵当権も落とし穴です。住宅ローンを完済していても、抵当権の登記が残っていれば申請できません。法務省は、抵当権の登記を抹消した後に申請するよう案内しています。電線などのために地役権が設定されている側の土地(承役地)も却下ですが、他人の土地から便益を受けている側(要役地)なら申請できます。通路や水路は、現に通路や水路として使われていなければ申請の対象になります。

境界については、測量までは求められていません。法務省が求めているのは、申請者が認識している隣地との境界が現地で分かる状態にあることと、その境界について隣地の所有者との間に争いがないこと。既存の境界標のほか、ブロック塀や道路といった地物で境界点が分かるなら、新しく目印を設ける必要はありません。分かる物がなければ紅白ポールやプレートを立て、写真で示します。申請後、法務局から隣の土地の所有者に境界の認識が照会される点は知っておいたほうがいいでしょう。

審査を経て断られる土地。不承認要件のAからE

申請は通っても、調査の結果として引き取ってもらえない類型がこちらです。

崖は、あるだけで駄目というわけではありません。政令の基準は勾配30度以上かつ高さ5メートル以上で、そのうえで崩落の危険があると判断される場合に不承認となります。地上の有体物として法務省が例示するのは、果樹園の樹木、倒木のおそれがある枯れた樹木、定期的な伐採が必要な竹、建物に当たらない廃屋、放置車両など。地下では産業廃棄物、建築資材(ガラ)、古い水道管、浄化槽、井戸、大きな石が挙がっています。切り株や電柱は一般的には該当しないとされますが、現地を見ないと確実な判断は難しい、というのが法務省の答え方です。

他人に不法占拠されている土地や、袋地に出入りするための通路の通行を妨害されている土地も不承認の対象です。袋地であること自体は問題にされません。使用や収益が妨害されている土地でも、その程度が軽微で通常の管理・処分を妨げないと認められるものは除かれます。

実際に断られているのは、何が理由か

ここからがこの記事の本題です。法務省は制度の運用状況を統計として公開しています。2026年7月末(令和8年7月31日)時点の速報値で、申請件数の総数は5,863件、国庫に帰属したのが3,008件、却下が85件、不承認が96件でした。

却下85件について、認められた理由を多い順に並べると、添付書類の提出がなかったものが37件、境界が明らかでない土地が23件、現に通路として使われている土地が22件、申請の権限を持たない人の申請が10件、建物がある土地が4件、現に水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地が1件でした。法務省は1つの事件で複数の理由が認められる場合があると注記していて、内訳の合計97件は却下の総数85件と一致しません。

ここで気づきたいのは、最も多い理由が先ほどのAからEにない項目だという点です。添付書類の不足と申請の権限がないことは、土地の性質ではなく手続の要件(法第4条第1項)による却下です。却下85件のうち37件で、この添付書類の不備が理由として認められています。土地が悪かったからではなく、出した書類のところで止まっている申請がいちばん目立つ、ということです。制度の説明でいちばん目立つ「建物があると却下」は4件と少ない。建物の有無は誰の目にも明らかなので、申請前に自分で気づいて脱落しているのでしょう。

不承認96件のほうは、地上の有体物が46件で最も多く、国による追加の整備が必要な森林が37件と続きます。以下、災害の危険を防ぐ措置が必要な土地が11件、国が金銭債務を負担する土地が10件、崖が7件、所有権に基づく使用収益が妨害されている土地が6件、民法上の通行権利が妨げられている土地が4件、地下の有体物が3件でした。こちらも複数の理由が認められる場合があるため、内訳の合計124件は不承認の総数96件と一致しません。森林は、不承認96件のうち37件、およそ4割でこの理由が認められたという読み方になります。放置された山林や、物が残ったままの土地が実際に落ちている、という構図です。

もうひとつ、取下げが1,102件ある点も見逃せません。内訳は、有効活用の見込みが生じたものが571件、却下・不承認であることが判明したものが392件、その他が139件です。つまり審査の途中で引き取ってもらえないと分かり、自ら引っ込めた例が、正式に却下・不承認となった181件よりも多い。表に出る却下件数だけを見て通りやすさを考えると、実態を見誤ります。もう一方の571件について、法務省は有効活用の例として、自治体や国の機関による活用が決まった場合、隣接地の所有者から引き受けの申出があった場合、農業委員会の調整で農地として使われる見込みになった場合を挙げています。件数の内訳までは公表されていませんが、申請者が同意すれば法務局から地方公共団体などへ寄附受けの可能性を確認する運用があり、その過程で別の行き先が見つかることがある、という話です。

相続登記をしていなくても申請できる。ただし断られたら登記は残る

意外に知られていませんが、相続登記が済んでいない土地でも承認申請はできます。相続、または相続人に対する遺贈で取得したのであれば、戸籍などで所有者であることを示す書面を添えて申請してよい、と法務省は答えています。名義が親のままの土地を手放したい人にとっては入口が広い。ただし遺贈は法定相続人に対するものに限られ、法定相続人以外の人が遺言で受け取った土地は制度の対象外です。

ただし、ここに落とし穴があります。法務省は同じ回答の中で、申請を取り下げたり却下・不承認となった場合は申請者が引き続きその土地の所有者になるので、相続登記を申請する必要があると書いています。国庫帰属を狙って審査の結果を待ち、それでも断られたなら、手元には土地と登記義務が残るわけです。

相続登記は2024年4月から義務になり、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁で、刑事罰の罰金とは別のもの)の対象です。施行前に相続した土地は、2027年3月31日と「知った日から3年」の遅いほうが期限になります。2027年3月31日まで残り206日。国庫帰属の審査を待っている間も、この時計は止まりません。制度の全体像は相続登記の義務化の記事、昔の相続の扱いは2027年3月31日の期限の記事で確認できます。

期限が迫っているのに国庫帰属の結論が出ない、という板挟みには、相続人申告登記で登記義務だけ先に果たしておく手もあります。売却や担保設定はできませんが、義務の履行としては認められる仕組みです。ただし義務を果たしたとみなされるのは申出をした人の分だけなので、相続人が複数いるなら、それぞれが申し出る必要があります。

申請前に潰しておける「落ち方」

統計を踏まえると、申請前の準備でつぶせる落ち方がはっきりします。書類の不備、境界、現況の3つが要注意です。

必須の添付書類は、土地の位置と範囲を示す図面、隣接地との境界点を示す写真、土地の形状が分かる写真、そして申請者の印鑑証明書。境界確定書や測量の成果は必須ではありません。写真は境界点が判別できるように撮り、目印は撮影のときだけ立てるのではなく、審査時と承認時にも分かる形で残しておく必要があります。

建物があるなら取り壊したうえで、抵当権の登記が残っているなら抹消してから。ここを片付けずに出しても入口で止まります。判断に迷う土地は、申請前に法務局へ相談できます。ただし法務省は、相談の結果と審査の結果が異なる場合があるとも書いているので、相談で見通しが立っても確約ではありません。申請を受け付けるのは、土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局にある不動産登記部門に限られます。相談のほうはもう少し柔軟で、全国の法務局・地方法務局が受け付けており、土地が遠方にあるなど申請先への相談が難しい場合は近くの本局でも相談できます。どちらも支局や出張所では扱っていません。相談は事前予約制で、一人1日1回30分以内。窓口での対面のほか、電話やウェブでも受けられます。相談票とチェックシートは記入したうえで臨みます(窓口ならそれを持参します)。申請そのものはインターネットやメールではできず、窓口か郵送のみという点も、相続登記の手続きとは違うところです。

審査には時間がかかります。標準処理期間は8か月とされ、事案によってはこれを超えることもある、と法務省は説明しています。書類の作成代行を仕事として引き受けられるのは弁護士・司法書士・行政書士に限られます(家族や親族が作成を手伝うのは差し支えないとされています)。しかも申請手続そのものの代理は本人か法定代理人しかできません。書類は専門家に任せられても、申請の主体は自分だということです。

その土地は、本当に国庫帰属が最短ルートか

手数料と負担金を払って手放す制度である以上、少しでも売れる見込みがあるなら、売却を先に確かめるほうが順序として自然です。負担金は基本20万円で、承認されて初めて納めます。ただし市街化区域等の宅地・農地と森林は、面積に応じて20万円以上になると法務省が案内しています(法務省の負担金のページ)。山林や農地を手放したいなら、この点を先に確かめてください。法務省自身も、国庫帰属以外の方法として相続放棄、自治体などへの寄附、民間への売買や贈与、農地なら農地中間管理機構、森林なら森林経営管理制度を挙げています。取下げのうち571件が「有効活用の見込みが生じた」ことによるものだった点も、申請と並行して別の行き先を探す価値があることを示しています。

買い手がつく可能性があるかどうかの見極めは、無料相談で入口の整理までお手伝いできます。建物付きの実家であれば、解体して国に引き取ってもらうより、売却のほうが向くこともあります。昭和56年5月31日以前に建てられた家屋などの要件を満たせば空き家の3,000万円特別控除が使える場合があり、適用の可否は税理士か税務署に確認してください。田畑や山林には別途の届出義務があるので、農地・山林を相続したときの記事もあわせてどうぞ。共有名義で共有者の同意が得られない土地は、そもそも申請ができません。その場合は共有持分の記事のほうが近い話になります。

次の一歩としては、登記事項証明書を取って抵当権が残っていないかを確かめ、現地で境界の目印と写真を用意したうえで、土地がある都道府県の法務局本局に相談を予約する。この順で進めるのが、却下の芽を先に摘む形になります。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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