相続登記の義務化とは。期限・過料・対象をわかりやすく整理
更新日 2026-07-19
親から相続した実家の名義がそのままになっている、あるいは祖父母の代の土地が誰の名義か分からない。そういう不動産を抱えたまま「いつか手続きすればいい」と後回しにしてきた人にとって、話が変わりました。2024年4月1日から、相続した不動産の登記が法律上の義務になったからです。それまで相続登記は任意で、放置しても罰則はありませんでした。いまは、正当な理由なく期限を過ぎると過料の対象になり、しかも過去の相続もさかのぼって対象になります。この記事では、義務の中身・期限・過料・例外を、法務省の一次情報に沿って一度に整理します。
いつから、何が義務になったのか
施行日は2024年4月1日です。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。ここで大事なのは、期限の起点が「亡くなった日」ではなく「自分が相続で不動産を取得したと知った日」だという点です。遠方に住んでいて相続の発生を後から知った場合などは、知った時点から数えます。
対象は土地も建物も含みます。遺言で取得した場合も同じく義務の対象です。相続登記そのものは以前からある手続きで、内容が新しくなったわけではありません。変わったのは「やってもやらなくてもよい」から「期限内にやる義務がある」に立場が変わった点です。
見落とされがちなのは「過去の相続」
制度でいちばん影響が大きいのは、これから起きる相続ではなく、すでに起きて放置されてきた過去の相続です。施行日より前に発生していた相続、たとえば十数年前に亡くなった親や祖父母の不動産が未登記のままになっているケースも、義務の対象になります。
この過去分の期限は、2027年3月31日か「知った日から3年」のどちらか遅い方です。多くの人は施行前から相続を認識しているので、実際には2027年3月31日が期限になります。全国の「実家の名義が祖父母のまま」という不動産の大半に、この日付が一律で迫っている状態です。残り233日です。過去分をどう進めるかは2027年3月31日が期限になる人が一番多いで詳しく整理しています。
自分の相続がいつ発生し、期限がいつになるのかは、状況によって変わります。生年月日や相続を知った時期を入れるだけで期限の目安が出る相続登記の期限チェッカーで、まず自分のケースを確かめておくと動き出しやすくなります。
期限を過ぎると何が起きるか
正当な理由がないのに期限内に申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象になります。過料は、行政上の金銭的な制裁です。刑事罰の罰金とは別のもので、前科がつくわけではありませんが、お金を払えば義務が消えるわけでもなく、登記をする義務自体は残り続けます。
ただし、期限を1日でも過ぎたら即座に過料、という運用ではありません。法務省の資料では、過料に至るまでに次のような段階が想定されています。
ポイントは、催告の段階で申請すれば過料には至らない設計になっていることです。いきなり金銭を取られるのではなく、まず促され、それでも正当な理由なく放置した場合に裁判所へ通知が行きます。なお、2026年時点で実際に過料が科された事例の報道や公表は確認されていません。制度が新しく、多くの人に長い経過措置期間があるためです。とはいえ「まだ実例がないから大丈夫」と読むのは危険で、過去分の期限が2027年3月31日に集中している以上、その後に運用が動く可能性は残ります。期限を過ぎてしまった場合の具体的な対処は相続登記の期限が過ぎたらどうなるかにまとめています。
「正当な理由」として認められる例
過料は「正当な理由なく」怠った場合の話です。法務省は、正当な理由として認められうる例を示しています。相続人が極めて多数で戸籍などの資料収集に時間がかかる、遺言の有効性や遺産の範囲が裁判で争われている、相続人自身が重病である、DV被害者などで避難している、経済的に困窮して費用を負担できない、といったケースです。
逆に、単に「義務化を知らなかった」「忙しくて手が回らなかった」は、この例には含まれていません。うっかり忘れていた、というだけでは正当な理由にはならないと考えておくのが安全です。自分のケースが正当な理由に当たるか迷うときは、自己判断で放置せず、法務局の手続案内や司法書士に確認してください。
遺産分割が終わっていなくても義務は果たせる
「誰がその不動産を相続するかまだ決まっていないから登記できない」という声はよくあります。ここで期限だけが過ぎてしまうのを防ぐために、相続人申告登記という簡易な手続きが用意されています。
これは、自分が相続人の一人であることを法務局に申し出るだけで、登記の義務を履行したものとして扱ってもらえる制度です。相続人の1人だけで申し出ることができ、必要な戸籍も自分と亡くなった人の関係が分かる最小限で済み、登録免許税もかかりません。オンラインでの申出にも対応しています。まず申告登記で過料のリスクを消しておき、落ち着いて遺産分割協議を進める、という順番が現実的です。
ただし申告登記はあくまで「義務を果たした」ことにする手続きで、その不動産を売ったり、貸したり、担保に入れたりするには、名義を実際に移す本来の相続登記が必要です。また、遺産分割がまとまったら、その成立日から3年以内に本来の登記をする義務が別途発生します。
登記にかかる費用と、免税が使える場合
相続を原因とする所有権移転登記には、登録免許税がかかります。税額は不動産の固定資産税評価額の0.4%で、たとえば評価額2,000万円の不動産なら8万円が目安です。このほかに戸籍などの書類の実費が数千円程度、司法書士に依頼する場合は報酬が加わります。自分で手続きする場合の費用感は相続登記を自分でやる費用で整理しています。
費用の面では使える軽減もあります。評価額が100万円以下の土地については、2027年3月31日までの間、登録免許税が免税になる措置があります。相続登記の期限と免税の期限がどちらも2027年に重なっているので、条件に当てはまる土地があるなら早めに動くほど有利です。詳しくは100万円以下の土地の免税措置を確認してください。なお、相続登記に権利証(登記識別情報)は原則として不要で、相続関係は戸籍で証明します。
放置のコストは過料だけではない
実は、過料そのものよりも重いのが、登記を放置している間に権利関係が複雑になっていくコストです。登記しないまま相続人の誰かが亡くなると、その人の相続人が新たに権利関係へ加わります(数次相続)。世代をまたぐほど関係者はねずみ算式に増え、全員から合意や署名をもらう手間と費用は膨らみ続けます。
売却もできません。登記簿の名義が亡くなった人のままでは、買主へ所有権を移せないからです。相続した不動産をいつか売るかもしれないなら、登記は早いほど安く、確実に済みます。こうした未登記の不動産が積み上がった結果が、国土の約2割を占めるとされる所有者不明土地の問題であり、義務化はまさにこの状態を解消するために作られた制度です。
まず、自分の期限を知ることから
相続登記の義務化は、要点だけ押さえれば難しい制度ではありません。知った日から3年以内、過去分は2027年3月31日まで、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。決まっていなければ相続人申告登記で時間を稼げる。この4点が背骨です。最初の一歩は、自分の不動産の期限がいつなのかをはっきりさせることです。相続登記の期限チェッカーで目安を確認し、必要書類や進め方に迷いが残るなら、無料相談や法務局の手続案内、司法書士に早めに相談してください。