相続登記チェッカー無料相談

相続登記を自分でやるか司法書士に頼むか。難しいケースの見分け方

更新日 2026-07-31

相続登記は自分でもできるらしい。そう読んだものの、うちのケースで本当にできるのかが分からず手が止まっている。よくある行き詰まり方です。判断の材料は、実は法務局が自分で公開しています。法務局には登記手続案内という窓口があり、そこで何を教えてもらえて何が対象外なのかが、そのまま自分でやれる範囲と専門家の領域の境目になっています。その線引きを、法務局の案内の文言に沿って具体的に示します。

相続登記は自分で申請できる。ただし書類は全部自分で作る

前提の確認から。法務局は「登記申請は御自身で行うことができます」と明記しています。司法書士でなければできない手続きではありません。ただし同じ説明の中で、申請書の作成も、登記の種類や内容に沿った添付書類の収集と作成も、申請する本人が行うことになると釘を刺しています。

そのうえで法務局はこう続けます。登記の種類や内容によっては高度な法律知識を要する場合や、書類の作成・収集に相当な手間と時間を要する場合もあるので、自分で進めるのが難しいと感じたら司法書士や土地家屋調査士に依頼することも併せて検討してほしい、と。役所が自分の窓口の案内文にここまで書くのは、案件によって難易度が大きく変わる手続きだからです。

費用は先に片付けておきます。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%。評価額2,000万円の実家なら8万円で、自分でやっても司法書士に頼んでも同じです。戸籍謄本や住民票の実費が別に数千円ほどかかります。評価額100万円以下の土地には登録免許税の免税措置もあります。司法書士の報酬は事務所と案件によって幅があり、法務局は「それぞれが手数料や報酬を定めているため、法務局でお答えすることはできません」として、最寄りの司法書士会への問い合わせを案内しています。相場を知りたいときの正しい聞き先はそこです。

法務局の登記手続案内は、1回20分・完全予約制

自分で申請する人の支えになるのが登記手続案内です。全国の法務局が、登記の専門知識を持たない人に対して、申請書の作成などに必要な情報を提供しています。利用時間は1回あたり20分程度で、完全予約制。方法は電話、法務局の窓口での対面、ウェブ会議から選べます。予約は「法務局手続案内予約サービス」というウェブの窓口か、管轄の法務局への電話です。1回で足りなければ、改めて予約して後日また受けられます。

20分で何をしてもらえるのか。手続きの流れ、必要書類の集め方、申請書の書き方の説明が中心です。すでに申請書を書いた人には、一般的な添付書類が過不足なくそろっているか、記載内容に誤りがないか、登録免許税の計算方法が合っているかを、20分で対応できる範囲で確認してもらえます。集めた戸籍を持参すれば過不足の確認もでき、その戸籍から判明する限りで法定相続人についての助言も受けられます。

一方、対象外だと明記されていることもあります。担当者が申請書を書いたり記入内容を下書きしたりすることはありません。遺産をどう分けるかという中身の相談も対象外で、弁護士等へ相談するよう案内されます。贈与税や相続税の質問は法務局では扱わず、税務署の担当。特定の司法書士を紹介することも、公平の観点からできないとされています。

20分の中でしてもらえること ・手続きの流れと必要書類の集め方 ・申請書の書き方の説明 ・書いた申請書の記載や添付の過不足の確認 ・登録免許税の計算方法の誤りの確認 ・集めた戸籍の過不足の確認 完全予約制。電話・対面・ウェブ会議から選ぶ 案内の対象外 ・担当者が申請書を作る、下書きする ・遺産の分け方、話し合いの進め方の相談 ・贈与税や相続税の相談 ・司法書士の紹介、報酬額の説明 この4つは弁護士・税理士・司法書士会へ 20分では確認しきれないこと ・何代にもわたる相続の戸籍の確認 ・関係する人が多数になる複雑な登記 案内は受けられるが、確認は申請後の審査で
登記手続案内の内と外(法務局のよくある質問をもとに作成)

法務局が「20分では確認できない」と書いているケース

見分け方の核心はここです。法務局のよくある質問には、手続案内では対応しきれない類型が名指しで書かれています。それが、自分でやる線を越えやすいケースそのものです。

ひとつは、何代にもわたる相続です。「相続が何代にも渡って発生し、相続人が極めて多数に上る場合などは、20分で確認することができないこともある」と説明されています。祖父名義のまま放置された実家がこれに当たります。相続人が枝分かれして増えていく仕組みと対処の順番は数次相続の記事で整理していますが、戸籍の束が20分で読み切れない場合、事前に確認しきれないまま申請することになり、補正のやり取りが増えます。自力で進めるかどうか、ここで一度立ち止まったほうがいい場面です。

次に、関係する人が多い複雑な登記。「関係当事者が多数になるなど複雑な登記については、20分で確認することができません」とあり、この場合は申請後の審査でじっくり確認する扱いになります。つまり誤りに気づくのが申請の後になり、補正のやり取りが往復します。

戸籍が足りないときも要注意です。過不足の確認はしてもらえますが、不足分の戸籍を「全て特定して収集方法等を御説明することは困難なときもあります」と正直に書かれています。どの戸籍を追えばいいか自体が分からない状態は、案内の枠に収まりません。誰のどの戸籍が要るかは必要書類のチェックリストでケース別に確認できるので、まずそこで自分のケースの重さを測ってください。

そして、遺産分割がまとまっていない場合。分け方や話し合いの進め方は登記手続案内では説明できない、と明確に線が引かれています。話し合いが動かないまま期限だけが近づいているなら、相続人申告登記で登記義務だけ先に果たす手があります。売却や賃貸には使えない応急処置ですが、過料の対象から外れるという一点では効きます。

税金の判断が絡む場合も同じです。親が元気なうちの名義変更と相続を比べているなら贈与税の話になりますが、法務局は税を扱いません。生前の名義変更を検討している人向けの記事でも触れたとおり、そこは税務署と税理士の領域です。

自分でやる形が成立するのはどんなときか

逆の条件も整理しておきます。相続人が配偶者と子だけで全員が協力的、不動産は実家ひとつ、誰が相続するかはもう決まっている。この形なら、自分で申請する選択は十分に成り立ちます。平日に法務局とやり取りする時間が取れることも条件に入ります。

進め方には順番があります。法務局は手続案内を使う前に、対象の不動産の登記事項証明書か登記事項要約書を取っておくよう求めています(窓口600円、オンライン請求は割安)。あわせて、相続登記については「登記申請手続のご案内」という登記手続ハンドブックが公開されているので、予約の前に一読しておくと20分の密度が変わります。遺産分割協議書のサンプルも、法務局の案内のPDFに載っています。

細かいところで差が出る点も挙げておきます。登録免許税は収入印紙での納付が一般的で、オンライン申請ならインターネットバンキングやATMからの電子納付もできます。遺産分割協議書など、あとで他の手続きに使う書類を返してほしい場合は、原本に相違ない旨を書いた写しを添えて申請時に申し出ます。登記が完了してから頼んでも返してもらえません。申請から完了までは、内容にもよりますが数日から数週間。審査の結果、補正や追加資料を求められることもあります。

知人や親族に代わりにやってもらうのは、どこまでか

意外と知られていない線引きです。司法書士法と土地家屋調査士法は、資格のない人が反復継続する意思をもって登記手続を代理したり、書類を作成したり相談を受けたりすることを禁じています。親切心で引き受けた側が法令違反に問われるおそれがある、という話です。

法務局の説明では、同居している親族に、すでに作成した申請書を法務局へ提出してもらう程度であれば、その親族が法令違反に問われることはないものと考えられるとされています。一方で、たまたま登記に詳しい知人に申請書の作成を頼むような場合は、個々の事情によっては違反に問われるおそれがある、と注意が向けられています。「詳しい人が身内にいるから任せよう」と考えていた人は、頼む範囲を書類の提出までにとどめるか、司法書士に依頼するかを分けて考えてください。

迷ったら、期限との距離で決める

判断がつかないまま時間だけが過ぎるのが、いちばん高くつきます。相続登記の申請義務は、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内。2024年4月1日より前に発生した相続についても、2027年3月31日か知った日から3年のどちらか遅い方までに申請する必要があります。過去分の期限までは残り233日です。

残り時間が短いほど、自分でやる選択肢は細くなります。戸籍集めにも遺産分割の話し合いにも時間がかかることを考えると、期限まで余裕がないケースでは最初から司法書士に依頼するか、相続人申告登記で義務だけ先に片付けるほうが安全です。自分の期限が実際いつなのかは、相続登記の期限チェッカーで相続を知った時期などを入れれば目安が出ます。

次の一歩は決まっています。まず登記事項証明書を取り、登記手続ハンドブックに目を通す。読んでみて自分の戸籍集めの範囲が見えたなら、手続案内を予約して20分を使う。何代分の戸籍が要るのか見当もつかない、連絡の取れない相続人がいる、分け方でもめている、税金の判断が絡む。このどれかに当たるなら、予約より先に司法書士会か司法書士へ相談するほうが早く終わります。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

期限チェッカーを使う 売却・処分の無料相談

関連記事