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数次相続の相続登記のやり方。実家が祖父名義のまま止まっているとき

更新日 2026-08-10

実家の登記を取り寄せたら、名義がまだ祖父のままだった。その祖父はとうに亡くなり、次いで父も見送っている。最初の相続の登記をしないうちに次の相続が重なった状態を、数次相続と呼びます。ここでつまずくのは書類の多さより先に、登記を何回に分けるのかという一点です。法務局は数次相続のための申請書様式と記載例を別に用意していて、そこに一件の申請では通らない条件まで書いてあります。この記事では、その一次情報に沿って、何をどの順番で進めるかを整理します。

名義が祖父のままでも、権利はすでに枝分かれしている

登記簿の名義が祖父のままでも、法律上の権利は止まっていません。祖父が亡くなった時点で、実家の権利は父たち子どもへ移っています。その登記をしないまま父も亡くなれば、父の持っていた分はさらに母やあなた、あなたの兄弟へ引き継がれます。表向きは祖父の一枚名義でも、中身は二世代分の相続人に分かれている。これが数次相続の正体です。

関係者は想像より広がります。祖父の相続人には父だけでなく、その兄弟である叔父や叔母も含まれます。叔父叔母がすでに亡くなっていれば、今度はいとこ、いとこの子まで権利を持つ人に加わる。放っておいた年数が長いほど、印鑑をもらって回る相手は増えます。

登記は相続の数だけ。一件で済むかは中間の相続で決まる

数次相続の登記は、発生した順にひとつずつ入れていくのが基本です。祖父から父たちへ、次に父からあなたたちへ。二世代分の相続なら、登記も二段構えになります。

ただし法務局は、二つの相続をまとめて申請する形の様式も用意しています。不動産登記の申請書様式のページには「遺産分割(数次相続)」という区分があり、様式と記載例が別立てで置かれています。記載例が想定している場面は「第1の相続が開始し、その相続の登記が未了の間に、その相続人が死亡して第2の相続が開始した場合」。祖父名義のまま父も亡くなった、まさにその状態です。

同じ記載例に、はっきりした線引きがあります。「最終の相続以外の相続について、共同相続人数名が権利を取得している場合には、一件の申請では登記することができません」。途中の相続で権利を取った人が複数に分かれていれば、まとめては通らないということです。法務局が数次相続用の様式と記載例を置いているのは、この条件に引っかからない形、つまり中間の相続で権利を取得したのが一人に定まる場面です。ただし記載例が書いているのは一件にできない条件のほうで、一人なら必ず一件で通るとまでは書かれていません。当てはめは戸籍と遺産分割の結果を見たうえで、法務局か司法書士に確認してください。

司法書士の解説では、この一件で済ませる形を中間省略登記と呼ぶことがあります。ただし法務局の様式にも記載例にも、その言葉は出てきません。書かれているのは、いま権利を持っているのが誰かという事実の当てはめだけです。自分の家がどちらに当たるかは、集めた戸籍と遺産分割の結果を突き合わせて初めて決まります。ここを取り違えると申請そのものが組み直しになるため、早い段階で司法書士か法務局の登記手続案内に確認しておくのが安全です。

祖父の相続の登記が未了のまま 父も亡くなった 分かれ道は「中間の相続」 祖父の相続で権利を取得したのは 一人か、複数に分かれているか 一人に定まる場合 二つの相続をまとめた一件の申請の 様式が用意されている (法務局「遺産分割(数次相続)」) 複数に分かれている場合 記載例の原文は「一件の申請では 登記することができません」 =相続ごとに分けて申請する 当てはめは戸籍と遺産分割の結果を見てから
一件でいけるかは、中間の相続で誰が権利を取ったかで決まる

申請書の「原因」欄は二段になる

一件でまとめて申請する場合、書き方も通常の相続登記とは変わります。法務局の記載例では、登記の原因として、まず第一の被相続人が亡くなった日と相続人の氏名、そして相続の旨を書き、続けて第二の相続人が亡くなった日と相続の旨を書くと説明されています。日付はどちらも戸籍に記載されている日を使います。空欄の様式そのものが、原因欄を二行取る作りになっています。

相続人の欄には、括弧書きで被相続人の氏名を書きます。この氏名は登記記録と添付する戸籍の記載に合っている必要があり、食い違うときは同一性を証する書面を足します。実家の登記が古いほど、この食い違いは起きやすいところです。相続人が二人以上なら、それぞれが取得する持分も書きます。代理人を頼まず自分で申請するときは、氏名の次に押印します。住民票コードを申請書に書いておけば、住民票の写しの提出を省けます。

申請人になる相続人については、氏名のふりがな、生年月日、メールアドレスも書きます。2026年4月に氏名と住所の変更登記が義務化されたのに伴い、登記所が住基ネットで変更を把握したときにこの連絡先へ知らせ、本人の了解を得て職権で変更登記をする運用が始まっているためです。その仕組みはスマート変更登記のやり方で整理しています。申請人にならない相続人や、住所が海外にある人については記載が要りません。末尾に書く電話番号は、直すべき点があったときに登記所の担当者が連絡するためのもので、平日の日中に出られる番号を書きます。携帯電話でも構いません。

集める書類は、亡くなった人ごとに一式

相続登記では、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をそろえて、相続人が誰かを証明します。数次相続では、これを亡くなった人ごとにやり直します。祖父の分の戸籍一式、父の分の戸籍一式、そして相続人全員の戸籍。相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日以後に発行されたものが必要です。重複するものを重ねて出す必要はありませんが、それでも通数は数十通に達することがあります。

戸籍集めは2024年3月に始まった広域交付で少し楽になりました。法務局の案内では、本人、配偶者、父母や祖父母、子や孫の戸籍等は本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できるとされています。ただし対象は直系までで、叔父や叔母の戸籍は含まれません。コンピュータ化されていない古い戸籍の一部も対象外で、その分は本籍地の市区町村に請求することになります。祖父の相続人をたどる数次相続では、結局あちこちの役所とのやり取りが残ります。集めた戸籍は法務局の法定相続情報証明制度(戸籍一式を一度提出して相続関係の一覧図に認証をもらう制度で手数料は無料)にかけておくと、一覧図の写しを出すか一覧図の番号を申請書に書くことで、戸籍の添付に代えられます。

数次相続でとくに効くのが、相続関係説明図です。祖父と父の二段の相続関係を図にして申請書に添えると、提出した戸籍の原本を、登記の調査が終わったあとに返してもらえます。これが原本還付です。戸籍を何十通も取り直す手間と実費を考えると、作る価値は大きい。ただし遺産分割協議書については、別にその謄本を出す必要があります。

このほか、被相続人の登記簿上の住所が戸籍の本籍と違うときは住民票の除票か戸籍の附票、遺産分割で決めるなら相続人の印鑑証明書、そして登記申請をする年度の固定資産課税明細書が要ります。書類の全体像はケース別のチェックリストにまとめました。

やることの順番

関係者が多い数次相続は、行き当たりばったりで動くと途中で必ず止まります。まず登記事項証明書(誰でも取れる証明書で窓口600円)で、実家の名義が今も本当に祖父のままかを確かめる。次に祖父の相続人と父の相続人を世代ごとに書き出し、戸籍で裏を取る。そこまで来て初めて、一件でいけるのか相続ごとに分けるのかが判断できます。

判断に迷ったら、法務局の登記手続案内で相談できます。ただし1回20分の枠で、何代にもわたる相続の戸籍の確認や、関係当事者が多数になる複雑な登記は20分では確認できないと法務局自身が明記しています。数次相続はまさにその類型に当たります。どこまで自分でやり、どこから頼むかの見極めは自分でやるか司法書士に頼むかの記事で整理しました。自分の相続に義務や期限があるのかがそもそも曖昧なら、先に相続登記の期限チェッカーでいくつかの質問に答えると、今の立ち位置の目安がつかめます。

期限は「相続ごと」に走っている

相続登記の申請義務は2024年4月1日から始まり、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内が期限です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁で、刑事罰の罰金とは別のもの)の対象になります。数次相続でまぎらわしいのは、この期限が相続の数だけ別々に走っている点です。

祖父の相続が施行日より前に起きていれば、その分の期限は2027年3月31日か、取得を知った日から3年の遅い方。父の相続が施行日より後なら、そちらは知った日から3年。祖父名義のまま止まった実家は、複数の期限を同時に抱えていることになります。過去に発生した相続は2027年3月31日に期限が集中していて、該当する人がいちばん多い層です。残り233日です。

話し合いがまとまらないなら、義務だけ先に止める

関係者が多い数次相続ほど、遺産分割の話し合いは長引きます。全員の同意が取れるまで登記できないとなると、期限に間に合わない不安が出てきます。そこで使えるのが相続人申告登記です。自分がその相続人の一人だと法務局に申し出るだけで、相続登記の義務を果たしたことになります。相続人が大勢いても一人で申し出ることができ、登録免許税もかかりません。法務局は数次相続の形についても申出書の記載例を用意していて、この場合は祖父の死亡が分かる戸籍、父が祖父の子だと分かる戸籍、父の死亡が分かる戸籍というように、たどる世代の分だけ戸籍が増えます。

ただし申告登記は応急処置です。これだけでは名義があなたに移ったことにはならず、実家を売ったり貸したり担保に入れたりするには、結局は本来の相続登記が必要になります。売却まで考えているなら、関係者がこれ以上増える前に話をまとめることです。共有のまま持ち続けたときに身動きが取れなくなる仕組みは、共有持分の記事で整理しています。戸籍が数十通になる、相続人が十数人に及ぶ、連絡の取れない人がいる。ここまで来ると自力での処理は現実的ではなく、司法書士に依頼したほうが結果的に早く済みます。どこから手をつけるべきか整理したい段階でも、無料相談で構いません。

今日からできる次の一歩

やることは決まっています。登記事項証明書で名義を確かめる。祖父の相続人と父の相続人を世代ごとに書き出す。そのうえで、中間の相続で権利を取ったのが一人なのか複数なのかを見る。ここが分かれば、一件の申請でいけるのか、相続ごとに分けるのかという最初の設計が決まります。想像より人数が多いと分かったら、それは専門家に相談する合図です。話し合いのめどが立たないなら、相続人申告登記で自分の義務だけ先に止めておく。祖父名義のまま次の代へ持ち越せば、印鑑を集める相手はまた増えます。動き出すなら、関係者がいちばん少ない今です。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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