過去の相続も対象。2027年3月31日が期限になる人が一番多い
更新日 2026-07-26
相続登記の義務化で本当に影響が大きいのは、これから発生する相続ではありません。すでに発生して、登記されないまま放置されてきた過去の相続です。法務省の推計では所有者不明土地は国土の約2割、九州の面積を超えるとされ、その主因が相続登記の未了でした。義務化は、これから起きる相続に網をかけるだけでなく、この放置されてきた「過去分」を動かすことにこそ本当の狙いがあります。だからこそ、いま未登記の不動産を抱えている人ほど直接の対象になります。この記事では、過去の相続がなぜ2027年3月31日に集中するのか、残された時間で何をすればよいのか、期限を過ぎるとどうなるのかを、法務省の一次情報に沿って整理します。残り233日です。
2027年3月31日が期限になる人が一番多い理由
2024年4月1日より前に相続が発生していた不動産も、義務化の対象です。この過去分の期限は、2027年3月31日か「不動産を相続で取得したと知った日から3年以内」の、どちらか遅い方と決められています。古い相続でも一律に期限が用意されている、という仕組みです。
ここが多くの人に効いてきます。祖父母や親の代の不動産が未登記のまま、という人の大半は、その相続の発生を施行日より前から知っています。知った日から3年で数えても施行前に起点が来てしまうため、結局は2027年3月31日のほうが遅く、そちらが期限になります。「亡くなったのが30年前」でも同じで、古い相続ほどこの日付に吸い寄せられます。次のようなケースは、まずこの日付が期限だと考えてよいものです。
- 実家の名義が亡くなった父や母のまま止まっている
- 田畑や山林の名義が祖父・曽祖父のままになっている
- 共有持分の一部が、亡くなった親族の名義で残っている
制度の考え方をもう少し広く押さえたい場合は、相続登記の義務化とはで期限・過料・対象の全体像を整理しています。
残された時間で、どう動くか
「まだ先」に見えても、相続登記は思い立ってすぐ終わる手続きではありません。戸籍を集めて相続人を確定し、遺産分割の話し合いをまとめ、協議書を作り、ようやく登記を申請します。相続人が多かったり、途中で相続人が亡くなって権利が枝分かれしていたりすると、集める戸籍だけで膨らみます。2024年3月に始まった戸籍の広域交付で、直系の戸籍は最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できるようになりましたが、それでも話し合いと書類作成には相応の時間がかかります。逆算すると、動き出しは早いほど楽になります。
進め方は、話し合いがまとまりそうかどうかで大きく二つに分かれます。
まとまる見込みがある場合。戸籍を集めて相続人を確定し、遺産分割協議書を作り、登記を申請します。関係者が少なくシンプルなケースなら、自分で進めることも十分できます。手順と費用の目安は相続登記を自分でやる方法と費用に整理しました。
まとまらない、または時間が足りない場合。期限に間に合わせることだけを先に確保する道があります。相続人申告登記は、自分が相続人の一人だと法務局に申し出るだけで登記の申請義務を果たしたことになる制度で、相続人が1人でも申出でき、登録免許税もかかりません。これで過料の対象からは外れます。ただし売却・賃貸・担保設定には本来の相続登記が必要で、遺産分割が成立したらその日から3年以内に本登記を入れる義務が残る点は押さえておいてください。話し合いは腰を据えて、義務だけは先に果たす、という順番です。
期限を過ぎると、いきなり過料ではない
期限を1日過ぎたら自動的に過料、というわけではありません。流れは、登記官が義務違反を把握し、相当の期間を定めて催告(申請を促す通知)を出し、それでも正当な理由なく期間内に申請されなかった場合に、管轄の地方裁判所へ通知されて過料の判断に進む、という段階を踏みます。裏を返せば、催告の段階で申請すれば過料には至りません。過料は正当な理由なく怠ったときの10万円以下で、2026年時点で実際に適用された事例の報道・公表は確認されていません。過ぎてしまった後の具体的な対応は相続登記の期限が過ぎたらどうなるかにまとめています。
正当な理由として法務省が挙げるのは、相続人が極めて多数、遺言の有効性が争われている、相続人自身が重病、といった限られた事情です。「知らなかった」「忙しかった」は例に入っていません。慌てて放置を続けるより、間に合わないなら申告登記で義務を果たしておくほうが確実です。
関係者が増える前に動く
先延ばしのいちばんの怖さは、過料そのものより権利関係が広がっていくことです。未登記のまま相続人の一人が亡くなると、その持分はさらに配偶者や子へと引き継がれ、話し合いに加わる人が次々に増えていきます。共有者が一気に膨らむこともめずらしくなく、そうなると全員の署名と印鑑を集めるだけで年単位の仕事になり、面識のない親族を探すところから始めることさえあります。2027年3月31日という期限は、関係者をまだ把握できるうちに整理するための、実質的な最後の機会です。
自分の相続がいつ発生し、期限がいつになるのか、まず本登記を目指すのか申告登記で急ぐのかは、状況によって変わります。生年月日や相続を知った時期を入れるだけで期限の目安が出る相続登記の期限チェッカーで、自分のケースを先に確かめておくと、次の一歩を決めやすくなります。個別の事情で判断に迷う場合は、法務局の手続案内か司法書士に相談してください。