相続登記の必要書類チェックリスト。ケース別に全部見せる
更新日 2026-07-24
相続登記の準備で最初につまずくのが書類集めです。やっかいなのは、必要書類が一通りではなく、遺言があるか、相続人で分け方を話し合ったか、といった事情でごっそり変わる点です。それなのに解説の多くは全部を一緒くたに並べるので、自分に関係のない書類まで集めようとして疲れてしまいます。ここではまず「自分がどのケースか」を見分けるところから始め、そのうえでケースごとに本当に必要な書類だけを示します。書類が揃えば、あとは相続登記の期限チェッカーで自分の期限を確かめて申請に進むだけです。
まず「自分がどのケースか」を見分ける
相続登記の必要書類は、大きく3つのケースに分かれます。どれにあたるかは、遺言書があるか、そして遺産の分け方を相続人で話し合って決めたか、この2つの質問でほぼ決まります。次の図で自分の位置を確かめてください。
ここで「話し合ってはいるが、まだ全員の合意が取れていない」なら、ケース2の書類はまだ揃えられません。その場合の対処は最後の見出しで触れます。
全ケース共通で必要なもの
どのケースでも土台になる書類は同じです。まずここから集めます。
- 被相続人(亡くなった方)の死亡が記載された戸籍(除籍)謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)。登記簿上の住所と死亡時の住所をつなぐために使う
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書(または評価額のわかる課税明細書)。登録免許税の計算に使う
- 登記申請書(法務局サイトに様式とひな形があります)
意外に思われるのが、権利証(登記済証・登記識別情報)が原則いらないことです。相続では、誰が相続人かを戸籍で証明する仕組みなので、亡くなった方の権利証が見つからなくても登記はできます。探して見つからず手が止まっている人は、ここで安心してかまいません。
ケース1:遺言で取得する場合(書類が最も軽い)
遺言書で不動産を取得する場合は、共通書類に遺言書を加えるのが基本です。自筆で書かれた遺言(自筆証書遺言)は、原則として家庭裁判所の検認という手続きを経てから使います。ただし法務局の自筆証書遺言書保管制度に預けてあった遺言は検認が不要です。公証役場で作った公正証書遺言も検認なしでそのまま使えます。
このケースの利点は、ほかの相続人の戸籍や印鑑証明書が原則いらないことです。誰が取得するかが遺言で決まっているため、相続人全員を確定させる必要が薄く、3つの中では書類がいちばん少なくなります。なお、遺言で相続人以外の人に不動産を渡す遺贈のケースは、他の相続人や遺言執行者の関与など手続きが変わってきます。あてはまりそうなら、司法書士や法務局の手続案内で自分の必要書類を確かめてください。
ケース2:遺産分割協議で取得する場合(最も多い)
遺言がなく、相続人で話し合って分け方を決めたときが、いちばん多いケースです。共通書類に加えて次が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍一式。相続人を漏れなく確定するため。本籍を移していた方は、複数の市区町村から古い戸籍まで取り寄せることになる
- 相続人全員の現在の戸籍謄(抄)本
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印したもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
負担の中心は、出生から死亡までの戸籍をそろえる作業です。ここでつまずく人が最も多いところでもあります。実家の名義が親ではなく祖父のままだったといった数次相続では、さかのぼる戸籍が一気に増え、印鑑証明が必要な相続人の顔ぶれも広がります。自分のケースがこれに近いと感じたら、早めに全体像を把握しておくと後がラクです。
ケース3:法定相続分のとおり登記する場合
話し合いで分け方を決めず、民法の定める法定相続分の割合でそのまま登記する方法です。この場合、遺産分割協議書と印鑑証明書は不要になります。一方で、出生から死亡までの戸籍一式と相続人全員の現在戸籍は、相続人を確定するためにやはり必要です。
手軽に見えますが、注意点があります。法定相続分の登記は不動産が相続人全員の共有名義になります。共有のままだと、あとで売るにも貸すにも全員の協力が必要になり、時間がたつほど当事者が増えて話がまとまりにくくなります。「とりあえず義務だけ果たしたい」なら、共有登記より次に触れる相続人申告登記のほうが身軽なこともあります。
書類はどこで取るか
集める先は大きく3か所です。迷ったら次を目安にしてください。
- 市区町村の役所:戸籍(除籍)謄本、住民票、住民票の除票、戸籍の附票、印鑑証明書、固定資産評価証明書。多くはその不動産や本籍のある市区町村で取ります
- 公証役場・家庭裁判所:公正証書遺言の謄本、自筆証書遺言の検認済証明など
- 法務局:登記申請書の様式、登記事項証明書(誰でも取得でき、窓口600円)
戸籍・住民票などの実費は、ケースにもよりますが合計で数千円程度が目安です。これに加えて、登記のときに登録免許税として固定資産税評価額の0.4%がかかります(評価額2,000万円なら8万円)。評価額100万円以下の土地には、2027年3月31日までの免税措置もあります。詳しくは免税措置の記事にまとめました。書類と費用の全体像がつかめたら、自分で申請するか司法書士に依頼するかを決めます。
戸籍集めを一度で終わらせるコツ
戸籍集めは、2024年3月に始まった広域交付で以前よりずっと楽になりました。直系の親子関係にある戸籍なら、本籍地がどこであっても最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できます。ただし兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外なので、おじ・おばの分までさかのぼる数次相続では、結局あちこちの役所とやり取りが残ります。
集めた戸籍は、法務局の法定相続情報証明制度にかけておくのがおすすめです。戸籍一式を一度提出して相続関係の一覧図に認証をもらう制度で、手数料は無料です。認証を受けた後は、この一覧図1枚で不動産の登記だけでなく、銀行や証券会社の相続手続きにも使い回せます。相続する財産が不動産以外にも多い人は、先にこれを作っておくと同じ戸籍を何度も出す手間が消えます。
期限が迫っていて書類が間に合わないとき
相続登記は2024年4月から義務になりました。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内が期限で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。施行日より前に相続した過去分は、2027年3月31日か「知った日から3年」の遅い方が期限です。全体像は義務化とは何かの記事で確認できます。
問題は、遺産分割協議がまとまらずケース2の書類が揃わないまま期限が近づく場合です。このときは、相続人申告登記という応急処置があります。「自分が相続人の一人だ」と法務局に申し出るだけで、いったん登記の義務を果たしたことにできる制度です。相続人の1人からでも申し出ることができ、必要な戸籍も自分と被相続人の関係が分かる最小限で足り、登録免許税もかかりません。ただし、これはあくまで義務を止めるための手続きで、その不動産を売る・貸す・担保に入れるには結局きちんとした相続登記が必要です。使いどころは相続人申告登記の記事にまとめました。
まずは自分がどのケースにあたるかを見分け、共通書類から手をつけるのが近道です。自分の期限がいつなのかは相続登記の期限チェッカーで目安を確かめられます。書類の判断や進め方に迷いが残るときは、無料相談や法務局の手続案内、司法書士に早めに相談してください。