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農地の相続の届出を忘れた。10か月を過ぎてからやること

更新日 2026-08-24

実家の名義を調べていたら、田畑や山が一緒に付いてきた。しかも登記とは別に、農業委員会への届出という手続きがあると後から知る。親が亡くなってからとっくに10か月は過ぎていて、いまさら出したら怒られるのではないか、過料を取られるのではないか。ここでは、その状態から動き出すための順番を、農林水産省が公開している様式とチラシの中身に沿って整理します。

農地の届出先は法務局ではなく農業委員会

農地を相続したら、農地法第3条の3第1項に基づき、相続を知った日からおおむね10か月以内に届出をします。届出先は法務局ではなく、その農地の所在地の農業委員会です。これを怠ると10万円以下の過料の対象になります。過料は行政上の金銭的な制裁で、前科のつく刑事罰の罰金とは別のものです。

この手続きが見落とされやすいのには理由があります。相続で人が向き合う窓口といえば役所、銀行、法務局あたり。農業委員会という名前は、農業をしていない相続人の日常にまず出てきません。相続登記の情報は世の中にあふれていても、農地の届出は農地を持つ人にしか関係しないぶん、目に触れる機会が少ないままです。

ここで押さえておきたいのは、期限を過ぎたからといって届出の窓口が消えるわけではないという点。農林水産省は届出先を「その農地の所在地の農業委員会」と案内し、様式は各農業委員会の窓口やホームページにあると説明しています。まずはその農業委員会に電話をして、いつの相続かを正直に伝え、届出書の出し方を聞くところから始めてください。どう扱われるかを自己判断で決めず、窓口に事情を話して指示を受けてください。

届出書に書く欄は6つ。中身を先に見ておくと気が楽になる

農林水産省が公開している様式例第3号の1「農地法第3条の3第1項の規定による届出書」は、1枚しかありません。書く欄はこれだけです。

1権利を取得した者の氏名等 相続した人の氏名と住所 2届出に係る土地の所在等 地目は登記簿と現況の両方を書く 3権利を取得した日 4権利を取得した事由 相続・遺産分割・遺贈などの別 5取得した権利の種類・内容 いまの耕作の状況など 6あっせん等の希望の有無 借り手・買い手探しを頼める欄
農地法第3条の3第1項の届出書(様式例第3号の1)の記載欄。農林水産省の様式例をもとに作成

1と3は、戸籍や住民票を見ながら書き写せば済みます。2の土地の欄で特徴的なのは、地目を登記簿と現況の両方書かせるところ。登記簿上は畑でも実際は原野に戻っている、という食い違いをそのまま書く作りになっています。備考欄は、登記簿上の所有名義人と現在の所有者が異なるときに登記簿上の所有者を書く欄です。この欄があること自体、登記簿の名義と現在の所有者がずれた状態を様式のほうが想定していることを示しています。名義が何代も前で止まっている場合の登記の進め方は数次相続の記事にまとめました。

4の「権利を取得した事由」には、相続(遺産分割、包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を含む)といった別を書きます。5は、所有権を取得した場合なら現在の耕作の状況や使用収益権の設定の有無などを記載します。押印は、氏名を自署するなら省略できると記載要領にはっきり書かれています。農林水産省のチラシも「手続は簡単です」と言い切っていて、実際、身構えるほどの分量ではありません。

6番目の「あっせん等の希望」欄が、遠くに住む相続人の出口になる

この様式でいちばん見落とされているのが、最後の第6欄でしょう。取得した農地について、第三者への所有権の移転や賃借権の設定といったあっせんを農業委員会に希望するかどうかを書く欄です。届出のついでに「引き受け手を探してほしい」と意思表示ができる作りになっています。

農林水産省のチラシにも、農業委員会は相続した方が地元を離れていて自分では手入れができない場合に、農地の管理についての相談や、地元で借り手を探すお手伝いをする、と書かれています。都市部に住んでいて年に一度も帰らない、草刈りのたびに片道3時間かけて往復している。そういう人にとって、この欄は義務を果たすついでに手に入る相談の入口になります。自分で貸し先を探して契約交渉をする代わりに、農地中間管理機構(農地バンク)に貸し付けるという方法も農林水産省が案内しています。

相続は届出でよい。売る・貸す・転用になると許可の世界に変わる

農地の手続きが分かりにくいのは、許可と届出が混ざっているからです。相続で取得したときは、許可ではなく届出で足ります。一方、農地を売買したり貸したりするには原則としてその農地の所在する市町村の農業委員会の許可が必要で、農林水産省はこの許可を受けていない売買等は無効だとはっきり書いています。買い手と話がまとまっても、許可を飛ばした契約は効力を持ちません。

宅地にして使いたい場合の転用は、さらに別の話になります。自分が所有する農地であっても自由に転用はできず、原則として都道府県知事等の許可が要ります。住宅を建てる、駐車場にするといった耕作以外の用途に充てることがこれに当たり、相談先はやはり農地の所在する市町村の農業委員会です。

逆に、自分で農業を続けるだけなら特別な手続きは必要ありません。ただし水路などは共同利用施設として賦課金の負担が必要な場合があるので、市町村や農業委員会、土地改良区に確認しておくと、あとで請求書を見て驚かずに済みます。

山林には90日の届出がある。農地より期間が短い

実家に山が付いてくることもあります。地域森林計画の対象になっている森林を取得したら、森林法に基づき取得から90日以内に市町村長への届出が必要です。こちらにも10万円以下の過料の定めがあります。農地の10か月と比べて猶予がかなり短いため、農地と山林の両方を相続したなら、先に山林の窓口へ連絡するのが順序として安全でしょう。対象の森林かどうかは市町村に問い合わせれば分かります。担当課の名称は自治体によって違うので、代表番号から森林の届出の担当につないでもらうのが確実です。

登記の期限は、この裏側で同時に走っている

届出を出しても登記は終わりません。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠れば、こちらも10万円以下の過料の対象です。田畑も山林も、宅地とまったく同じ扱いで対象になります。届出と登記は制度も窓口も別なので、片方を済ませても、もう片方は自動では動きません。

そして施行日より前に起きた相続には、2027年3月31日という別の期限があります(知った日から3年のほうが遅ければそちらまで)。残りは206日。親名義や祖父名義のまま止まっている土地を抱えている人ほど、この日付が効いてきます。自分の期限がいつなのかは相続登記の期限チェッカーで数分で確かめられます。すでに過ぎていそうなら、期限が過ぎたときの記事に応急処置の順番をまとめています。

どうしても手放したいときの順番

農地を売る・貸すには、原則として農業委員会の許可が必要です。転用となれば、原則として都道府県知事等の許可が要ります。この制約があるぶん、宅地と同じ感覚で買い手を探せる土地ではありません。農林水産省が案内している道は、農地中間管理機構(農地バンク)への貸付けと、農業委員会によるあっせんです。あっせんのほうは、届出書の第6欄で希望を伝えられます。まずはそこで意思表示をして、農業委員会に地元の事情を聞くところから始めるのが実際的でしょう。

引き取り手がどうしても見つからないときは、相続土地国庫帰属制度という道もあります。ただし農地の場合、農地バンクの中間管理権が設定されているときや土地改良賦課金が課されているときは、申請できない土地の具体例として挙げられています。要件と負担金は国庫帰属制度の記事で確認してください。順序としては、売却や貸付けの可能性を探ってからの検討になります。

税の面では、相続後に自分で農業を営む場合と農地バンクに貸し付ける場合に、相続税の納税の一部が猶予される仕組みがあります。3大都市圏の特定市内か、市街化区域かどうかなどで適用条件が変わるため、当てはまるかどうかは税理士や税務署に確認してください。

今日できることは、そう多くありません。固定資産税の課税明細書を出して、地目に田・畑・山林が混ざっていないかを見る。あれば農地の所在地の農業委員会に電話して、いつの相続かを伝えて届出の出し方を聞く。並行して期限チェッカーで登記の期限を確かめる。処分まで見据えて相談先が見つからないときは、無料相談で物件の種類と所在地から、対応できる相談先の有無をご案内します。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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