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相続登記の費用は誰が払う。申請人になった人が納める仕組み

更新日 2026-08-05

実家の名義を変える話までは進んだのに、そのお金を誰が出すのかで止まっている。あるいは、動けるのは自分しかいないので立て替えるつもりでいるけれど、あとで兄弟に請求できるものなのか確信が持てない。相続登記の費用で行き詰まる家は、だいたいこのどちらかです。先に整理しておくと、費用と呼ばれているものは性質の違うお金の寄せ集めで、分けて考えると誰が出すかの答えも見えてきます。

費用と呼ばれているものの中身

相続登記でかかるお金は、大きく3種類に分かれます。ひとつ目が登録免許税。国に納める税金で、相続による所有権の移転登記なら固定資産税評価額の0.4%です。評価額2,000万円の実家なら8万円。自分で申請しても司法書士に頼んでも、この額は変わりません。

ふたつ目が書類の実費です。戸籍謄本や住民票の写しを取る手数料で、集める範囲によりますが数千円ほど。登記事項証明書は窓口で600円(オンライン請求は割安)。郵送で申請するなら書留の料金や、完了書類を送り返してもらうための切手も要ります。

3つ目が司法書士の報酬で、これは依頼した場合だけ発生します。額は事務所と案件によって幅があり、法務局は「それぞれが手数料や報酬を定めているため、法務局でお答えすることはできません」として、最寄りの司法書士会への問い合わせを案内しています。自分でやるか頼むかの見極めは難しいケースの見分け方に書きました。

この3つは支払う相手が違います。税は国、実費は市区町村や法務局、報酬は依頼した司法書士。誰が払うかの話も、ひとまとめにせずここから始めるほうが早く片づきます。

登録免許税を実際に納めるのは、申請人になった人

法務局が公開している登記手続ハンドブックを読むと、お金の流れがはっきりします。登記申請書には課税価格と登録免許税の額を書く欄があり、書面で申請する場合は、現金を国に納めてその領収証書を申請書と一緒に出すか、収入印紙を申請書と一緒に出すかのどちらかで納めます。印紙は申請書に直接貼らず、白紙の台紙に貼って申請書とつづり、申請書と台紙の間に契印をします。印紙そのものには押印しません。

つまり、登記所に登録免許税を納める形になるのは、申請書に申請人として名前を書いた人です。誰かが全額を用意して申請するところから始まります。ここが「立て替え」が生まれる正体です。

法務省や法務局の案内には、相続人の誰が費用を負担すべきかについての定めや説明はありません。登記の手続きの上では申請人が納める、という事実があるだけです。納めた人が最終的にその分を持つのかどうかは、手続きとは別の話になります。家族の間での分担は、そちらで決めることになります。

登録免許税(国に納める) 固定資産税評価額の0.4% 評価額2,000万円なら8万円 納めるのは申請書に名前を書いた申請人 100万円以下の土地は免税の対象 書類の実費(役所・法務局へ) 戸籍や住民票の手数料で数千円ほど 登記事項証明書は窓口600円 郵送申請なら書留と返信用の切手も 司法書士報酬(頼んだ場合のみ) 依頼した人と司法書士の間の契約 額は事務所と案件により幅がある 相場の問い合わせ先は司法書士会 分担の取り決めは手続きの外側 法務局の登記手続案内では扱われない
費用の内訳と、それぞれの払い先(法務局の案内をもとに作成)

一人で申請すると、他の相続人に届かないものがある

遺産分割をしないまま法定相続分どおりに登記する場合、名義は相続人全員のものになります。それでも申請人は全員でなくてかまいません。法務局のハンドブックには、複数の相続人のうちの一人が申請人となって登記申請をすることもできる、と書かれています。相続人の一人が代表して申請する形も、手続きとしては取れます。

ただし同じ箇所に、見落としやすい注意が続きます。その場合、申請人とならなかった相続人には登記識別情報が通知されません。登記識別情報は、登記名義人本人による申請であることを登記官が確認するための情報で、一定の登記を申請するときに法務局へ提供します。登記済証とあわせて、いわゆる権利証と呼ばれてきたものです。登記が完了すると、登記名義人となった申請人に通知されます。

そして、登記完了証と登記識別情報通知書は再発行も再交付もできません。将来その不動産を売ったり担保に入れたりする段になって、自分の分の情報を持っていないと気づく相続人が出てきます。その場合にどう進めるかは、管轄の法務局か司法書士に確認することになります。誰が費用を立て替えるかを話すときに、誰を申請人にするかも一緒に決めておいたほうがいい理由がここにあります。

完了書類の受け取り方も先に決めておくと迷いません。法務局の窓口で受け取るなら、申請書に押したものと同じ印鑑を持参します。郵送で受け取るなら、宛名を書いた返信用封筒と切手を、登記申請書と一緒に提出する作りになっています。

負担の割合は、登記の窓口では決められない

法務局には登記手続案内という相談の窓口があり、1回20分程度の完全予約制で、手続きの流れや必要書類の集め方、申請書の書き方を教えてもらえます。ただし遺産の分け方や話し合いの進め方については、登記手続案内では説明できないと明記されていて、弁護士等への相談を案内されます。費用を誰がいくら負担するかは、まさにその分け方の一部です。

税金の相談も同じで、贈与税や相続税は法務局では扱わず、税務署の担当になります。立て替えた分を後から精算する形にするのか、遺産の中から出すのか、不動産を取得する人が全部持つのか。決め方そのものと、それをどう書き残すかは、司法書士や弁護士と詰める領域です。少なくとも、口約束のまま登記だけ済ませてしまうと、あとで「聞いていない」が始まります。

払う額のほうを小さくする手

負担の話がこじれる前に、額そのものを削れないか見ておく価値はあります。土地の評価額が100万円以下なら、登録免許税は免税です。2027年3月31日までの免税措置で、1筆ごとに判定するので、合計が100万円を超えていても各筆が100万円以下なら適用できます。申請書に条文を書かないと受けられない点だけ注意してください。

実費も工夫の余地があります。法定相続情報証明制度を使えば、認証を受けた一覧図の写しは手数料無料で、銀行や年金の手続きにも同じ紙を使い回せます。戸籍集めは2024年3月に始まった広域交付で、直系の戸籍を最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました(兄弟姉妹の分は対象外)。どの書類が要るかは必要書類のチェックリストでケース別に確認できます。

お金の工面がつくまで時間を稼ぎたいときは、相続人申告登記という選択肢があります。登記簿上の所有者について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを申し出る手続きで、登録免許税がかかりません。相続人の一人が単独で申し出られて、受理されれば申し出た人については登記義務を果たしたことになります。ただし売却も賃貸も担保設定もできず、遺産分割がまとまれば成立の日から3年以内に本来の登記が要ります。限界は相続人申告登記の記事で確かめてください。

そもそも払えないときの扱い

相続登記を申請しないまま期限を過ぎると、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。その正当な理由の例として法務省が挙げているものの中に、相続登記の義務を負う人が経済的に困窮しているために、登記の申請に要する費用を負担する能力がない場合、という項目があります。お金がないという事情は、法務省自身が例に書いているわけです。

とはいえ、これは自動的に免除される仕組みではありません。過料までの流れは、登記官が義務違反を把握して催告し、それでも正当な理由なく申請されないときに裁判所へ通知される、という順序です。放っておけば当てはまる、と考えるのは危ない読み方になります。期限が近いのに費用の工面がつかないなら、登録免許税のかからない申告登記で、義務の履行だけを先に済ませる手があります。期限を過ぎてしまった場合の動き方は期限が過ぎたらどうなるかの記事にまとめました。

次の一歩は、金額を確定させることです。実家に届く固定資産税の課税明細書を出して、「価格」または「評価額」と書かれた数字を探してください。登録免許税の計算に使うのはこちらで、「固定資産税課税標準額」ではありません。法務局がわざわざ注意しているくらい、間違えやすいところです。その数字の0.4%が、兄弟で話し合うべき金額になります。自分の家の期限がいつなのかは、相続登記の期限チェッカーで数問に答えれば目安が出ます。額と期限が数字になったところで、はじめて分担の話ができます。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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