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法定相続情報一覧図の使い道。戸籍の束が紙1枚になる制度

更新日 2026-08-21

銀行に戸籍の束を出して、返してもらうのを待って、次は法務局へ。同じ紙をコピーしては出し直す作業が続くと、相続の手続きは実際の手間よりずっと重く感じます。法定相続情報一覧図は、その繰り返しを止めるために法務局が用意した仕組みです。戸籍一式を一度だけ提出して認証をもらえば、そのあとは認証された紙1枚を各所へ持ち回れます。法務局の認証に費用はかかりません。使い道と、作るときに迷いやすい分かれ道をまとめます。

法務局が戸籍の束を紙1枚に置き換えてくれる

法定相続情報証明制度は2017年5月に始まりました。相続人が、亡くなった人と相続人の関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を作り、戸除籍謄本等の束と一緒に登記所へ提出します。法務局の説明では、一覧図の内容が民法に定められた相続関係と合致していることを登記官が確認した上で、その一覧図に認証文を付した写しを無料で交付する制度です。

ポイントは、戸籍を集める作業自体は消えないところにあります。消えるのは、集めた束を提出先の数だけ用意し、返却を待ってから次へ回すという時間です。しかも提出した戸籍謄本等は、一覧図の写しを交付する際に併せて返却されます。手元に戸籍も残り、認証された一覧図も増える形です。

手数料は無料です。ただし戸籍謄本の取得には市区町村の所定の手数料がかかり、郵送で申し出る場合や郵送で交付を受ける場合は郵送料が自己負担になります。無料なのは法務局の認証の部分だと考えておくと、見積もりを外しません。

相続登記、預金、相続税、年金。どこまで使えるのか

法務局が挙げている使い道は、相続登記の申請手続のほか、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続などです。年金については2020年10月から利用範囲が広がり、遺族年金や未支給年金、死亡一時金等の請求の際に、身分関係を証する書面として一覧図の写しが使えるようになりました。

法務局はこのほかに、他の行政庁や金融機関などの様々な相続関係手続にも使えると説明しています。証券会社や生命保険のように個別の名前が挙がっていない窓口もあり、利用できるか分からない場合は提出先の機関に問い合わせるよう案内されています。作る前に、実際に回る予定の窓口へ一本電話を入れて、一覧図の写しで足りるのか、ほかに何が要るのかを聞いておくと確実です。

不動産が複数の法務局の管轄にまたがっている人ほど、恩恵は大きくなります。相続登記は不動産の所在地を管轄する法務局ごとに申請するため、本来は管轄の数だけ戸除籍謄本等の原本の束を出さなければなりません。一覧図の写しはその束の代わりになるので、複数の法務局に束を出す必要がなくなります。

相続登記の義務化とは、こう噛み合う

相続登記は2024年4月1日から申請が義務になり、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内という期限がつきました。施行日より前に起きた相続も対象で、その場合の期限は2027年3月31日か知った日から3年のどちらか遅いほうです。多くの人は前者に当たり、今日から数えて残り206日。この期限に向けて動くとき、一覧図は二つの場面で効きます。

ひとつは書類の使い回しです。2024年4月1日からは、登記申請書の添付情報欄に法定相続情報番号を記載することで、一覧図の写しそのものの添付を省略できるようになりました。番号は一覧図の写しの右肩部分に記載されている識別番号です。ただしこの番号が使えるのは不動産登記の手続だけで、銀行や税務署の手続では使えません。

もうひとつは、遺産分割がまとまらないときの応急処置との組み合わせです。相続人申告登記では、法定相続情報一覧図の写しを提出するか、申出書に法定相続情報番号を記載することで、戸籍の証明書の添付に代えられます。制度の限界も含めた使い方は相続人申告登記のデメリットにまとめました。自分の期限がいつなのか曖昧なら、先に相続登記の期限チェッカーで数問に答えて目安を出してから、書類の段取りに入るほうが手戻りがありません。期限を過ぎている場合の考え方は過去の相続と2027年3月31日で説明しています。

申出の手順と、集める書類

手続きは、書類を集める、一覧図を作る、申出書と一緒に登記所へ出す、という順に進みます。申出先は4つの候補から選べます。

STEP1 書類を集める 戸除籍・住民票の除票・本人確認書類 STEP2 一覧図を作る 法務局のページに様式と記載例あり STEP3 登記所へ申し出る 申出書を添えて。郵送でも可 申出先はこの4つから選ぶ 1 被相続人の本籍地(死亡時) 2 被相続人の最後の住所地 3 申出人の住所地 4 被相続人名義の不動産の所在地 一覧図の写しを無料で受け取る 預けた戸籍も同時に返ってくる
法定相続情報一覧図の申出の流れ(法務局の案内をもとに作成)

4つの候補があるおかげで、遠方の実家の相続でも自分の住所地で手続きできます。窓口へ出向かず郵送で済ませることもでき、その場合は返信用の封筒と切手を同封し、申出書に郵送を希望する旨を書きます。窓口で受け取るときは、申出書の申出人の表示欄に書いた住所氏名と同じものが載った公的書類、たとえば運転免許証やマイナンバーカードを持参します。

用意する書類は次のとおりです。

兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人の親等に係る戸除籍謄本を追加で求められることがあります。ここは相続登記の必要書類と重なる部分が多いので、ケース別の整理は相続登記の必要書類チェックリストと合わせて見ると重複を減らせます。祖父名義のまま何代分も止まっている場合は、そもそも誰が相続人かの確定から始まります。その順番は数次相続の相続登記で説明しました。

戸籍は戻ってきますが、申出人の本人確認のために出した運転免許証のコピー等は返却されません。住民票の写しの原本を他の手続きに使いたいなら、原本とコピーを併せて提出する扱いになっています。

作る前に決める、続柄と住所の二か所

一覧図の様式は法務局のページで公開されていて、配偶者と子の場合、子のみの場合、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹、代襲相続が生じている場合、旧民法下の家督相続まで、記載例つきで選べます。図の形が決まっている分、迷うのは中身の書き方です。

ひとつめが続柄の書き方です。被相続人との続柄は、戸籍に記載される続柄のほか、申出人の選択で「子」と記載することもできます。ただし続柄を「子」と記載した場合は、相続税の申告等、これを利用することができない手続があると法務局が明記しています。相続税の申告に使う可能性が少しでもあるなら、戸籍どおりに書いておくほうが安全です。

ふたつめが相続人の住所です。記載するかどうかは任意ですが、書いておくと、その後の相続登記等の申請や遺言書情報証明書の交付の請求で、各相続人の住所を証する書面の提供が不要となることがあります。法務局に遺言が預けられているかもしれない家庭なら、遺言書保管制度の手続きにもつながる話です。注意点として、一覧図の写しの交付を受けた後に住所が変わっても、それを理由に再申出をすることはできません。

一覧図で分かること、分からないこと

この制度が証明するのは、戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人が誰かという一点です。そこから外れる事情は反映されません。相続放棄をした人や、遺産分割協議の結果として相続分を持たないことになった人がいても、一覧図にはその人の氏名等が記載されます。逆に、推定相続人から廃除された人は相続権がはく奪されているため記載されません。

つまり一覧図は「誰が法定相続人か」の証明であって、「誰がどの財産を取得するか」の証明ではありません。遺産分割協議書など、一覧図の写し以外の書類が別に要る場面は残ります。法務局も、利用先の機関に一覧図の写し以外で必要となる書類をあらかじめ尋ねるよう案内しています。

使える人にも枠があります。申出ができるのは被相続人の相続人、またはその相続人です。委任による代理人は、親族のほか、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士に限られます。被相続人や相続人が日本国籍を有しないなどの理由で戸除籍謄抄本を提出できない場合は、この制度自体を利用できません。

5年という保存期間と、再交付できる人

提出した一覧図は登記所で5年間(申出日の翌年から起算)保存され、その間は写しの再交付を受けられます。申出書には必要な写しの通数を書く欄があり、法務局の記入例では4通と記入されています。銀行や証券会社を同時に回るつもりなら、最初の申出でまとめて交付を受けておくと往復が減ります。

見落としやすいのが、再交付を受けられる人の範囲です。当初の申出書に申出人として氏名を記載した人だけが再交付を請求でき、申出人にならなかったほかの相続人は請求できません。申出書の申出人の欄は、相続人の代表となって手続きを進める人を書く形になっています。兄弟でそれぞれ手続きを進める予定があるなら、誰が申出人になるかを先に決め、写しの通数を多めに見積もっておくほうが後で困りません。再交付の申出先も、当初の申出をした登記所です。

もうひとつ、書類に不備があったまま放置しない。登記官から不足の指摘を受けたのに必要な書類や正しい一覧図が提出されない場合、預けた書類は一式返戻され、返戻にも応じないと申出日から3か月経過した後に廃棄されます。集めた戸籍が無駄になるのは避けたいところです。申出書にも、申出の日から3か月以内に一覧図の写しと返却書類を受け取らない場合は廃棄して差し支えない、と書かれています。郵送で申し出て受け取りを後回しにしたまま忘れる、という形でも同じことが起きます。

まずやることは二つに絞れます。回る予定の窓口を紙に書き出して、それぞれが一覧図の写しで足りるかを電話で確かめること。そして被相続人の本籍地の市区町村役場に、出生から死亡までの連続した戸除籍謄本が必要だと伝えて請求することです。相続人の範囲や不動産の状況が入り組んでいて自分で判断しづらいなら、司法書士や法務局の手続案内、税金の扱いは税理士へ、と相手を分けて無料相談で最初の一歩だけ聞いてしまうほうが早く進みます。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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