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遺言書保管制度のやり方。3,900円で法務局に預ける手順

更新日 2026-08-11

親に遺言を書いておいてほしい、あるいは自分の分を用意しておきたい。調べると法務局が3,900円で預かってくれる制度が出てきますが、どこへ何を持って行くのかまでは書かれていないことが多いはずです。ここでは自筆証書遺言書保管制度の手続きを、法務省の案内に沿って順番に並べ直しました。先に押さえておくと動きやすい点が三つあります。費用は遺言書1通につき3,900円。預けられるのは遺言者本人だけで、郵送も代理人も使えません。そして書き直しになる原因でいちばん多いのは、遺言の中身ではなく用紙の余白です。

3,900円を払うと、法務局は何をしてくれるのか

自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書の原本を法務局(遺言書保管所)が預かる仕組みで、2020年7月に始まりました。手数料は遺言書1通につき3,900円。預けた遺言書は、原本が遺言者の死亡後50年間、画像データが150年間、適正に管理されます。自宅の引き出しにしまっておく場合と違って、紛失・亡失のおそれがなく、相続人等の利害関係者による破棄や隠匿、改ざんを防ぐことができます。

相続が起きたあとの手続きも短くなります。自筆の遺言書は本来、家庭裁判所の検認という手続きを経てから使いますが、この制度に預けた遺言書は検認が不要です。残された家族は、法務局で遺言書情報証明書を取れば、その日から動き出せます。

期待しすぎないほうがいい点もあります。申請のときに法務局が見るのは、民法の定める自筆証書遺言の形式に合っているかという外形的なチェックだけです。法務省は、本制度は保管された遺言書の有効性を保証するものではない、とはっきり書いています。内容に関する質問や相談にも一切応じてもらえません。誰に何を渡すかで迷いがあるなら、預ける前に弁護士等の専門家に相談しておく話になります。

預けるまでの手順は六つに分かれる

保管の申請ができるのは遺言者本人だけです。代理人による申請も、郵送による申請もできません。全体の流れは次のとおりです。

1. 遺言書を自分で書く 全文・日付・氏名を自書して押印 2. 預ける保管所を決める 住所地・本籍地・不動産の所在地 3. 保管申請書を作る 様式は法務省のページか窓口で 4. 予約を取る 30日先まで。当日の予約は不可 5. 本人が来庁して申請 持ち物五つ・3,900円は収入印紙 6. 保管証を受け取る 保管番号入り。再発行はできない
遺言書の保管の申請の流れ(法務省の案内をもとに作成)

迷いやすいのが二つめの保管所選びです。申請できるのは、遺言者の住所地、本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地、このいずれかを管轄する遺言書保管所。三つの候補の中から、自分にとって行きやすいところを選べます。実家の名義がまだ親のままなら、その不動産の所在地という選び方もできるわけです。

ひとつ注意があります。2通目以降を追加で預ける場合は、最初に申請した遺言書保管所にしか申請できません。原本の閲覧や、預けるのをやめる撤回の手続きも、原本が置かれている保管所でしか行えない決まりです。遠方の保管所を選ぶと、あとから通うのが負担になります。

書き直しになるのは中身より様式

この制度で預かってもらえるのは、民法968条の要件を満たした自筆証書遺言に限られます。全文と作成日付と氏名を遺言者が自書して押印すること。日付は特定できるように正確に書くことが求められ、「◯年◯月吉日」のような書き方は認められません。財産目録だけはパソコンで作ったり登記事項証明書や通帳のコピーを添えたりできますが、その場合は目録の全ページに署名押印が必要です。

そのうえで、本制度を使うときだけの様式のルールがあります。ここで引っかかる人が多いところです。

余白は、確保されていない場合はもちろん、余白に1文字でもはみ出していれば書き直しになります。せっかく書き上げても、上下左右の空きが足りないだけで出直しです。書き始める前に定規で線を引いて、その内側だけに書くようにすると確実です。

予約は必ず要る。当日の持ち物は五つ

遺言書保管所の窓口で行う手続きは、すべて予約制です。予約できるのは30日先までで、当日の予約はできません。予約は手続きをする本人が取る決まりで、法務局手続案内予約サービスの専用ページなら24時間いつでも申し込めます。電話や窓口でも取れますが、平日の日中に限られます。夫婦がそろって1通ずつ預ける場合も、1人につき1件の予約が必要です。

予約した日に持って行くものは五つあります。遺言書、あらかじめ作成した保管申請書、添付書類、顔写真付きの身分証明書、そして手数料です。添付書類は、本籍と筆頭者の記載が入っていて、マイナンバーや住民票コードの記載のない住民票の写し等の原本。身分証明書は運転免許証やマイナンバーカードなど、官公署が発行した顔写真付きのもので、本人確認のため欠かせません。手数料の3,900円は収入印紙で納めます。印紙は保管所の庁舎内の収入印紙の販売窓口か、近くの郵便局等で買えます。

申請書を作らないまま行くと、予約した時間内に手続きが終わらず、出直しになることがあります。忘れ物があれば予約していても手続きはできません。

手続きが終わると保管証が渡されます。ここには遺言者の氏名と出生の年月日、手続きをした遺言書保管所の名称、そして保管番号が書かれています。保管番号は、あとで閲覧や撤回をするときにも、相続開始後に家族が証明書を請求するときにも役立つ番号です。保管証は再発行ができません。法務省は、預けたことを家族に伝えるときに保管証の写しを渡しておくと確実だと案内しています。金庫の奥にしまい込んでしまうと、伝えるつもりだった相手に届きません。

相続が起きたあと、家族はどうやって気づくのか

預けただけでは、遺言書があること自体が伝わらないのではないか。ここが気になる人は多いはずです。制度には通知の仕組みが二つ用意されています。

ひとつは関係遺言書保管通知です。遺言者が亡くなったあと、相続人や受遺者、遺言執行者のうち誰か1人が遺言書を閲覧したり遺言書情報証明書の交付を受けたりすると、その他の関係する人全員に、遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。遺言者の側にも相続人の側にも特別な手続きは要りません。ただし、誰も閲覧等をしなければ通知は始まりません。

もうひとつが指定者通知で、こちらは遺言者が希望した場合にだけ実施されます。保管の申請をするときに、通知してほしい相手を3名まで指定しておくと、法務局が戸籍の担当部局との連携で遺言者の死亡を確認できた時点で、指定された人へお知らせが届く仕組みです。誰にも言わないまま預けておきたい事情があるなら、この指定をしておくかどうかが分かれ目になります。

相続が始まったあとに家族ができるのは、遺言書が保管されているかどうかを確かめる遺言書保管事実証明書の請求、内容の分かる遺言書情報証明書の請求、そして遺言書の閲覧です。いずれも遺言者が亡くなったあとでなければできません。証明書の交付請求は全国どこの遺言書保管所でも手続きでき(全国312か所)、郵送でも受け付けてもらえます。法務省は郵送を勧めています。原本そのものを見る閲覧だけは、原本が保管されている保管所に出向く必要があります。遺言書情報証明書は、遺言書の原本の代わりとして各種の手続きに使うものと位置づけられていて、家庭裁判所の検認は要りません。

遺言があっても、相続登記の義務は消えない

ここが見落とされがちなところです。遺言で不動産を取得した場合も、相続登記の義務化の対象になります。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。2024年4月1日より前に起きた相続も対象で、その場合は2027年3月31日と知った日から3年のうち遅いほうが期限になります。遺言書を預けたことで安心して、名義の話が止まってしまうのがいちばん惜しい。

裏を返せば、この制度に預けてある遺言書は、相続が起きたあとの動き出しを早くします。家庭裁判所の検認を待たずに、遺言書情報証明書を取ればそのまま各種手続に使えるからです。ただし必要書類はケースによって変わります。必要書類のチェックリストと、管轄の法務局が行っている登記手続案内で確認してください。

親の不動産を今後どうするかを考えている段階なら、生前贈与で名義を移すのか、遺言で渡す先だけ決めておくのかという比較が先に来ます。その整理は親が生きているうちの名義変更にまとめました。すでに相続が起きていて期限のほうが気になる人は、相続登記の期限チェッカーで数問に答えれば、自分の期限の目安が出ます。

次の一歩は小さくて構いません。法務省のページから保管申請書の様式を印刷し、A4の紙に余白を測って線を引く。書き上がったら、住所地か本籍地か実家の所在地を管轄する保管所を選んで予約を取る。内容に迷いがあるなら、預ける前に弁護士等へ、名義の段取りが不安なら司法書士や法務局の手続案内へ。順番を分けて相談すると、どちらも短く済みます。

参考(一次情報)

あなたの期限は? 亡くなった時期を選ぶだけで、申請期限と残り日数を確認できます。

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