マンションの相続登記。敷地権の確認から申請までの手順
更新日 2026-07-28
親が住んでいた分譲マンションを相続することになり、名義変更の段で手が止まる人は多いはずです。一戸建てなら土地と建物を登記すればいいと分かる。ところがマンションの登記事項証明書には「敷地権の表示」という見慣れない欄があって、土地の分をどう扱うのかが読み取れない。結論から言うと、分譲マンションの相続登記は敷地権の確認さえ最初に片付けてしまえば、その後は一戸建てとほとんど同じ流れで進みます。法務局が公開している申請書の記載例に沿って、確認の順番と費用の見方を整理します。
マンションの一室も義務化の対象。期限は知った日から3年以内
2024年4月1日から、相続登記の申請は義務になりました。対象は不動産一般で、マンションの一室、つまり区分建物もそのまま含まれます。土地を持っていないから関係ない、という理屈は通りません。期限は、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内。起点は亡くなった日ではなく知った日です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁で、刑事罰の罰金とは別のもの)の対象になります。制度の全体像は相続登記の義務化の記事にまとめました。
親が何年も前に亡くなっていて、マンションだけが名義そのままという場合も対象外にはなりません。施行日より前に起きた相続は、2027年3月31日か知った日から3年のどちらか遅いほうが期限になります。この日まで残り233日です。過去の相続で期限がこの日に集中する事情は過去の相続の記事で詳しく扱っています。
最初に見るのは登記事項証明書の「敷地権の表示」
マンション特有の関門はここだけと言ってもいいくらいです。敷地権とは、マンションの一室である専有部分と、建物が建っている土地の共有持分が切り離せない形で結び付けられた権利のことです。分譲マンションの多くはこの形になっていて、専有部分の所有権が移れば土地の持分も一緒に移ります。法務局も相続登記の案内で、不動産の書き方を「一般的な分譲マンション(敷地権付き区分建物)の場合」として、通常の土地・建物とは別立ての記載例で用意しています。
確認は登記事項証明書を1通取れば済みます。法務局の窓口で600円、オンライン請求なら割安です。表題部に「敷地権の表示」という欄があり、敷地権の種類(所有権など)と敷地権の割合を示す数字が記載されていれば敷地権付きの区分建物です。この場合、土地を別の不動産として書き足す必要はありません。
逆に、表題部を探しても敷地権の表示が見当たらないマンションもあります。この場合は土地の持分が別個の不動産として登記されていることがあり、申請書の書き方が変わります。登記簿の記載を見ないと判断できないところなので、証明書を持って管轄の法務局の手続案内に確認するのが確実です。ここを自己流で判断して土地の持分を登記し忘れると、あとで売却の直前に発覚して慌てることになります。
申請書は不動産番号を書けば敷地権の2項目だけで足りる
敷地権付きだと分かれば、申請書の書き方は法務局の記載例のとおりです。不動産の表示は登記事項証明書のとおりに正確に書き写すのが原則ですが、不動産番号を使うと省略ができます。不動産番号は、一筆の土地または一個の建物ごとに付された13桁の番号で、登記事項証明書に記載されています。
ここに一戸建てとの違いが出ます。通常の土地・建物なら、不動産番号を書けば所在・地番・地目・地積や、所在・家屋番号・種類・構造・床面積の記載を省略できます。敷地権付き区分建物の場合は、不動産番号を書いても「敷地権の種類」と「敷地権の割合」の2項目だけは残る、というのが法務局の記載例の建て付けです。番号を書くかどうかは任意なので、分からなければ証明書のとおりに全部書き写しても差し支えありません。
添付する書類は一戸建てのときと同じ考え方で、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書と印鑑証明書などを、遺言の有無や分け方に応じてそろえます。ケース別の一覧は必要書類のチェックリストにまとめました。申請先は、そのマンションの所在地を管轄する法務局です。相続人が遠方に住んでいる場合でも、管轄は不動産の場所で決まります。
登録免許税は評価額の0.4%。使う数字を間違えやすい
費用の中心は登録免許税です。相続による所有権の移転の登記は、固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)。評価額2,000万円なら8万円が目安になります。マンションでは専有部分の建物と敷地権の両方が課税価格の対象になります。ただし、毎年届く固定資産税の課税明細書で土地の欄が一棟の敷地全体の価格を指しているのか、敷地権の割合を反映した額なのかは、自治体によって表記が違います。どの数字をどう拾うかは、管轄の法務局の手続案内で確かめるのが確実です。
法務局がわざわざ注意しているのが、この数字の取り違えです。課税価格に使うのは固定資産課税台帳の価格、課税明細書で「価格」または「評価額」と表記されているほうであって、「固定資産税課税標準額」ではありません。住宅用地の特例が効いていると課税標準額は評価額よりかなり低く出るので、そちらを使うと税額の計算が狂います。明細書を紛失した場合は、市区町村が発行する課税証明書などで確認できます。価格が載っていない不動産については法務局が認定した価格になるため、管轄の法務局に問い合わせます。
自分で申請するか司法書士に頼むかで迷う人は、自分でやる場合の費用の記事もあわせて見てください。敷地権付きのマンション1件を、相続人が争わず遺産分割協議書もそろっている状態で申請するなら、書類の型は決まっています。
マンションは優遇から外れやすい、という非対称
費用の話をもう一段進めると、マンションには制度上の不利がいくつかあります。相続登記には、評価額100万円以下の土地について2027年3月31日まで登録免許税を免税にする措置があります。ただし対象は、土地の所有権の移転の登記と、表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存の登記です。建物は含まれません。持分を取得する場合は、不動産全体の価額に持分の割合を掛けた額で判定します。敷地権付き区分建物の相続登記は建物の登記として申請するため、この免税を使えるかどうかについて法務局の案内に明示はありません。該当しそうだと感じても自分で判断せず、管轄の法務局に確認してください。条件と申請書への書き方は免税措置の記事で確認できます。
差がもっとはっきり出るのは売るときです。相続した実家を売却するときに使える空き家の3,000万円特別控除は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋などを対象とする特例で、区分所有のマンションは対象外とされています。一戸建てなら、売却価格や耐震改修といった要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を差し引ける場面でも、マンションでは同じ手が使えません。適用の可否は個別事情で変わる領域なので判断は税理士や税務署に任せるとして、売却まで視野に入れているなら、この非対称は早い段階で知っておくほうが計画を立てやすくなります。特例の中身は3,000万円控除の記事にあります。
取得者が決まらないとき、放置したときに起きること
相続人が複数いる場合、マンションは物理的に分けられないので話がこじれやすいところです。共有のまま登記する、一人が取得して他の相続人に代償金を払う、売って代金を分ける。おおむねこの三択になります。結論が出るまでに時間がかかりそうなら、相続人申告登記という手当があります。自分がその相続人の一人だと法務局に申し出るだけで登記の義務を果たしたことになり、一人でも申し出ができて登録免許税もかかりません。ただし売却や賃貸には本来の相続登記が必要で、遺産分割が成立したらその日から3年以内に登記する義務が残ります。使いどころは相続人申告登記の記事で整理しました。
放置の負担は過料だけではありません。名義が亡くなった人のままでも、管理費と修繕積立金の請求は毎月続きます。空室のまま何年も置けば出ていくばかりです。さらに、登記しないうちに相続人の誰かが亡くなると、その人の相続人が権利関係に加わり、合意を取るべき相手が増えていきます。数世代さかのぼった実例は数次相続の記事で扱っています。
自分が名義人になったあとの話もひとつ。2026年4月1日から住所や氏名の変更登記も義務になり、変更から2年以内という期限がつきました。過去に済ませていない分は2028年3月31日までです。マンションを買ったときの住所のまま登記簿が止まっている人は珍しくないので、相続登記のついでに確認しておくと二度手間になりません。住所変更登記の義務化の記事に、期限と、申出によって義務違反を避ける方法をまとめてあります。
今日できるところまで
まずは登記事項証明書を1通取り、表題部に敷地権の表示があるかを見る。あれば種類と割合を書き写し、課税明細書で「価格」の欄を確認する。ここまでで申請書の骨格はできあがります。自分の期限がいつなのかがはっきりしない人は、相続登記チェッカーで今の状況を確かめてください。敷地権の表示が見当たらない、相続人の間で取得者が決まらない、亡くなった人の名義がさらに前の世代のままだった。こうした引っかかりが出たら、管轄の法務局の手続案内か司法書士に早めに当たるほうが結局は安く済みます。どこに相談すればいいか迷う段階なら、無料相談から状況を聞かせてください。